スポーツの指導では、目先の勝ち負けばかりを追い求めて子どもたちの成長や気持ちを考慮せず、自分の考えが正しいと思って指導している指導者が多く存在しています。
少年サッカーの現場でも、指導者の自己中心的な考えで指導をされると、子どもたちは怒られまいと言われたとおりにやることしか考えれなくなってしまいます。
少年サッカーでは、保護者や指導者は子どもたちがのびのびと楽しむための手助けを行うことが本来の姿です。しかも、少年サッカー年代では身体的にも精神的にも成長の途中段階です。
そのため、完璧を求めるのではなく「今の時期に何ができるのか」「どうしてあげるべきなのか」と考えてあげることが大人には求められます。
そこで今回は、子どもにあった指導とは何かという視点で私の分かる範囲で説明していきたいと思います。
目次
教えるではなく気づきを与えてあげる
大人は、子どもができないことがあるとすぐに口をだしてしまいます。子どもがやることがどうしても気になってしまいつい口をだしてしまいがちではないでしょうか?
大人は、子どもよりも知識が豊富であるため、つい子どもに対してなんでも教えてしまいがちです。ですがそこはぐっと我慢しましょう。
人間は、自分に興味があることや自分の意志で考え行動することによって、自分で気づいたことのほうが人から教えられたことよりも身につきやすいものです。
大人は、すぐに教えてしまうのではなく、「この場合どっちに出せばよかったかな?」程度にヒントを与えて自分で気づくような手助けしてあげることが理想的です。
ただし、何も教えず自由にやらせるのではなく、サッカーの基本的な部分は教えてからでないと「気づき」が生まれることもありません。
ある一定の部分まで、例えばサッカーの基本的なことを教えた段階であれば、その時の状況に応じて子どもに質問しヒントを与え考えさせるという感じの指導が望ましいと思われます。
大人の基礎を押しつけない
日本には、「基礎をしっかり教えこまないと後から伸びてこない」や「基礎を学ばないと悪いクセがついてしまう」などそんな事を言う大人がたくさんいます。
しかし、基礎とは一体何を意味するのでしょうか。それでは、少し考えてみましょう。例えば、コーンを狙って正確にボールを蹴るとします。
この時に考えられる基本や基礎とは一体なんでしょうか?それは、目標に向かってしっかりと当てることが基礎ではないでしょうか。
サッカーの試合でのパスは相手に正確に渡すことが大事です。足のどの部分で蹴るとかどんなフォームで行うとかそのようなことは問題ではありません。
キックの基本は、ボールの真横に軸足を置いて蹴ると言われていますが人それぞれ特徴があります。例えば小学生は、軸足をボールの真横に置いて蹴ろうとするとよく地面を蹴ってしましがちです。
そんな時は、軸足をボールの真横から少し離しキックをするときは、少し斜めから足を振ってあげることでボールを地面に触れる事なくうまく蹴ることができます。
人それぞれ特徴があるためいろいろな蹴り方があると思います。そのため、蹴り方にどの蹴り方が正しいとは言えません。
それは本人が自分にあった蹴り方を見つけるしかないからです。基本や基礎は大事ですが、人それぞれ特徴があります。
その人にあった基本や基礎があることを知ってほしいです。
年代別特性にあったトレーニングを行う
年代によって伸びやすい能力がある
指導では、対象の年代の子どもたちによってどんな能力が伸びやすいのか?そのことを指導者が知っているとその年代に適した練習のテーマを考えることができます。
例えば、6~8歳の子どもは自分の気持ちが芽生え始める時期です。自分の物は自分で持つ、相手に取られたくない奪われたくないといった自立心が育ち始めます。
この時期に、ドリブルやボールキープの練習をすると比較的早い段階で覚えることができる年代になります。そして、9歳~10歳になると3対1や4対2のようなグループで行う練習を取り入れると、パスやシュートといった複数人で行うプレーが理解しやすい年代です。
高学年で芽生える社会的感覚
11歳~12歳の高学年代になると、正義感・秩序・自立心などの社会的な感覚が育ち始めます。チームとしてのつながりを持ち、みんながどう機能するか個人の特徴とは何かを考え、周りを理解し自分で考え行動に移せるようになってくる年代です。
「6年生なんだから」とか「おにいちゃんなんだから」といった言葉は使わないようにしましょう。そのような言葉をかけられて発揮した自立心は、その子が持っている本当の能力ではありません。
自立心とは、本来自然に芽生える感覚なのに、「大人にやれと言われたからやった」のでは、本来の個性を削ってしまう可能性があります。日本では、サッカーの成長と人間の成長をつなげる考え方は珍しいです。
しかし、ヨーロッパではスポーツと社会や教育の結びつきが強くこのような考え方は一般的になっています。日本の指導は、スポーツ面での技術をどう教え込もうかとマニュアル化する傾向が強いです。
子どもたちが自ら考え育ってくる特徴を見逃さないよう注意して指導を行ってほしいと思います。
スキルは総合的に上達させていく
サッカーには、キック、ドリブル、フェイントなどの技術・コーディネーション(動き神経系)・個人戦術・チーム戦術など様々な技術や要素が必要になります。
どれか1つだけの技術・要素を伸ばすのではなく総合的に伸ばしていくことが大事です。例えば前回はドリブルをやったので、今回はコーディネーション練習をという感じで行います。
体がスムーズに動くようになれば前回やったドリブルにフェイントを織り交ぜたドリブルができます。テーマが戦術であれば、効果的な場面でドリブルを使えるようにもなります。
1つだけの技術を集中的に伸ばすのではなく、総合的に全体を同時に少しずつ伸ばしていくような練習を行っていきましょう。
サッカーの練習は試合を想定した練習を行うことが重要
サッカーの練習では、よく1対1での練習が行われますが、チームスポーツとして現実的な練習ではないと思われます。
なぜかというと、サッカーの試合の中で1対1の場面は全くないとは言い切れませんが、遭遇する場面はほとんどないと思います。そのため、サッカーにおける練習では味方がいる状態で行える2対1か2対2で行う練習が理想的です。
このような考え方を、ヨーロッパの指導者の9割方はこの考えに賛同しているようです。そのため、サッカー先進国では当たり前の考え方になっています。
1対1のサッカーでは味方がいません。それでは周りを見ることもなく下を向いてドリブルしたりボールだけを見てしまっています。
これではサッカーがうまくなりません。味方がいる状況といない状況では、ドリブルやパスを行う時のボールの置く位置や姿勢など全てが違うものになります。
味方がいない状況は、サッカーの試合ではほぼあり得ない状況です。練習とは常に試合を想定して行わなければ練習として意味がありません。
そうでないと練習のための練習を行っているに過ぎません。試合のための練習を行えるようにサッカーでの練習は味方がいる状態で行う必要があります。
まとめ
自ら考えてサッカーをやることで、サッカーの楽しさを感じながらスキルの習得上達をしていければ、子どもたちがもっとサッカーを好きになり成長していってくれると思います。
少年サッカーでは、「サッカーが好き」という気持ちを大切にしていきましょう。それが子どもたちのサッカーの成長につながっていくのです。