サッカーでは、その時の状況によってプレーを常に考えて行わなければいけません。自分で探したり作り出したり見つけださなければなりません。
そのためには、自分で「考える」ことがとても重要になってきます。現代の子どもたちは常に教えられています。
答えが何かを教えてもらえないと不安で仕方ないのが現代の子どもたちの実情です。受け身ではサッカーを楽しめないのです。
子どもたちが「考えて」自分で見つけ出す嬉しさを感じれるように指導していく必要があります。
そこで今回は、子どもたちが「考えて」プレーができる指導について考えていきたいと思います。
目次
子どもが自ら考えられる指導を行いましょう
大人主導の指導になっていませんか
子どもたちに指導する時に、大人の考えを主導とした誘導型の指導にはなっていませんか?
答えを最初に与えてから考えさせる大人が多いと思います。
私も、最初の頃は答えを教えてから子どもに考えさせていました。しかし、この誘導型の指導では子どもは成長できないのです。
まず、自分で考える前に答えが用意されているのですから、最終的には大人が与えた答えへただ導かれてしまうだけです。
何も考えていないのと同じことです。
サッカーのプレーには基本的に答えはありません。なぜかというと、試合の中では常に同じ状況にはならないからです。
練習中に、指導者の思い通りのプレーができていない時によく見られるのが、動きをストップさせて指示を出す指導者がいます。
大人(親や指導者)の好むプレーをやらせることが、正しいプレーにつながるとは限りません。サッカーは基本的に自由なスポーツです。
指導とは、気づきを与え考えさせることです。
事前に指導者が答えを用意しその通りに教えるのではなく、気づきやヒントを与える程度に留めて、そこから先は自分で答えを導きだすことが子どもたちの成長につながっていくのです。
子どもの考える力を育てる
子どもの自立心を育てる
少年サッカーにおいて、U-8(8歳以下)世代と呼ばれる年代があります。
この年代の子どもたちは、幼児年代の子どもに比べて考える力の発達の伸び率が高い時期にあるため自立に向けて準備を始める世代になってきます。
この年代の子どもは、幼児の考えから少しずつ変化が現れ何でも自分1人でやりたがります。
U-8世代の次の年代である、U-10世代(9歳~10歳)頃から目立ってくる自立に向けて準備を始める世代がU-8世代になります。
この年代の子どもには、なるべく物ごとを1人で考えれるよう自分で考え判断できる機会を与えてあげることが重要になってきます。
この時期に、大人(親やコーチ)は子どもたちが考え答えを出す前に答えを与えてしまったり、子どもの考えを代弁し続けることで、子どもが自立するために重要な準備期間を逃してしまうことにつながっていきます。
サッカーでは、プレイの中で常に選手1人1人が瞬時に考え判断が要求されるスポーツです。
自分でプレイの判断を1人で行えるようにする為には、自立した考えから判断を下す能力を身につけさせる必要があります。
そのためには、自立に向けての準備段階であるこのU-8世代で、子どもが自ら考え自分で判断できるよう、私たち大人が見守り支援を行っていく事が大切です。
子どもの自立心を育てるための大人の役割とは
子どもが自立するために大人にできることは、できるだけ子どもの行動を事前に察することはやめましょう。
この時期の子どもは、幼児期から少年期へ気持ちが切り替わる途中段階であり、大人からみるとやること全てが危なっかしく見えてしまい常に気になってしまいます。
そのため大人は、子どもをかばってしまいがちで子どもの代わりに先回りしてものごとを考えてしまい、子どもに考えさせる前に大人が解決してしまいます。
このような事を繰り返していては、子どもはいつまで経っても自分で考えて判断できるようにはなりません。
子どもが何を言おうとしているか、何を大人に求めているのかが分かってしまっても、子どもがそのことを言葉にするまでこちらから先回りして答えを教えてしまうことは辞めましょう。
子どもが自分の考えを言葉にできるまでは、辛抱強く待ち続けましょう。
こうした態度で子どもと接することで考える力や自ら表現する力を育てることにつながっていきます。
論理的思考力を伸ばす
日本の子どもは、10歳を過ぎたあたりから口数が減る傾向にあります。考えられる原因が2つあります。
1つ目は、家庭や学校内での生活環境です。
現代の子どもは大人に一方的に支持される環境にあるため、自分でものごとを考えて行動したり意見を出す機会が少なくなってきています。
2つ目は、日本人には集団主義的な傾向が強く、なるべく輪を乱すような発言は避けようなど常に回りに合わせようとします。
このような環境では、子どももなかなか自分の考えを言うための練習をする機会がありません。
そこで、対話の基礎力を身につけるためのトレーニングを行う必要があります。
ゲーム形式で対話のトレーニングを月数回、練習前などに15分程度行うだけ、数か月で子どもは分かりやすく論理的に対話する能力を身につけることができます。
低学年世代からこのような対話トレーニングを積み重ねておけば、中学年世代以降のこどもが周囲の目を気にしてコミュニケーションが取れなくなるという事態を防ぐこともできるでしょう。
対話トレーニングのルールを簡単に説明させていただきます。
1.結論を先に言う事(「好き」や「嫌い」など先に結論から言います)
2.理由を言います
質問は1度で終わらせず、何度か質問して子どもに考えの内容を掘り下げさせて最後にまとめて確認します。
質問は「結論」→「理由」の順で質問していきましょう。
是非参考にしていただき実際にトレーニングしてみてはいかがでしょうか。
精神的自立と論理的思考が発達するU-10年代
サッカーの育成年代において、ゴールデンエイジの入り口とされるU-10年代は思考力やコミュニケーション能力などが最も発達しやすい非常に重要な時期です。
大人に対してあいまいな言葉を持ちだし反抗や反論をはじめるのもこの時期で、自分の考えでものごとを判断しはじめるようになってくる年代です。
この年代の子どもたちが、正しく物ごとを考えるためのスキルを与え道筋を立てて自分の考えを説明できる習慣を身につけさせると、言葉を使ってのコミュニケーションをいやがらずに行うことができます。
そして、論理的な考えができる子どもに育っていきます。
そのため、精神的自立がはじまるこの年代に、コミュニケーションの楽しさと物ごとを考える面白さそのためのスキルを与えることで論理的な考えができるようになります。
今後の子どもの人生で大きく役に立ってくることでしょう。
子どものコミュニケーション能力について
抽象的思考ができない低学年世代
この年代の子どもは、ものごとの特徴をおおまかにとらえて把握する能力がまだ身についていないため、分かりやすい指示や言葉でしかものごとを理解することができないです。
そのため、自分に向けられて言われた言葉以外は自分の問題としてとらえることができません。
練習の時や試合の時などに、コーチがチーム全体に注意を与えたり指示を出している最中に全く話しを聞いていない、子どもがコーチに怒られたり注意されている場面をみかけることがあります。
この年代の子どもたちは、全体に向けられた言葉では自分に向けて言われた言葉として理解することができない年代です。
大人(保護者・コーチ)は、子どもの特徴を理解して子どもたちと接するともに指導育成していく必要があります。
物ごとを客観的に考えられる中学年世代
小学生3、4年生くらいになってくると物ごとを客観的・抽象的な考えでとらえることができるようになり、一般的な注意や話しの内容を客観的に理解できるようになってきます。
「別に」や「知らない」などのあいまいな言葉を用いて、大人の問いかけに対して応じようとしない適当な態度をとりはじめるのもこの時期です。
考えることができる子どもを育成するためには、大人がこのような言葉や態度に対してきっぱりと拒否する言葉や態度を子どもに示すことが大切です。
自分で言いたいことを二言三言で簡単に済ませようとしはじめるのもこの年代です。特に10歳以降の子どもは注意が必要です。
この年代では、大人の教えで子どもが二言三言で簡単に伝えようとする癖を辞めさせ、内容が整った文で話しができるように教えていくことが、相手に伝わるコミュニケーションをとることができる子どもへと成長させることができます。
子どもが日本語に慣れ親しみはじめるのがこの年代です。この時期あたりから、子どもは周りの状況を気にし始め恥ずかしいという気持ちを覚えます。
そのため、なるべく目立たないような気づかいを始めます。特に10歳以降からこの傾向が現れ始めるようです。
欧米の子どもたちは、この時期から自分の考えをしっかりと伝えることができます。
そのためのスキルを教育で身につけ始めているため、日本の子どもと欧米の子どもとの間に差が開き出すのがこの時期です。
世界基準でものごとを考えられる子どもを育てるためには、自分の考えを論理的に主張できる場を子どもたちに与えることが重要です。
まとめ
サッカーは、チームプレイで行う競技です。
自分の考えを相手に伝えることも必要ですし相手の考えを尊重しお互いが分かりあうことで素晴らしいプレイを行うことにも繋がっていきます。
自分の考えをもつことで、他人の考えとの違いがあることを知ることでお互いの考えを尊重することができるようになります。
そして、1人が1人が個性的でいろんな考えかたがあるということを、コミュニケーションを通して経験することがこの年代にとってとても大切です。
子どもたちが、楽しいサッカーができるよう自分で考えて行動できる環境を作りましょう。
指導とは「答えを与えず自ら考えさせること」を意識して指導者や大人は子どもの成長を見守ってほしいです。